親離れができていない

いままで生きてきて、親と盛大な喧嘩をした記憶がない。

私も相当にだらしがないので、ああだこうだ叱られた記憶は数えられないくらいあるのだが、

もう根本から、お前とは合わない!と匙を投げられたことはなかったし、私自身もまた心から両親を憎く思った経験がなかった。

 

狭い世界の中にいると価値観というのは固定化されるもので、中高生あたりまで、親子間で絶望的に「合わない」人たちがいるということを、私自身まるで想像すらしていなかった。

表面的にあった「なんだかんだ親子だから」という空気感をそのまま受け止めて、今は仲が悪くても、血が繋がっている以上最終的には解り合えるものなんだろうと、ぼんやりそういう認識で過ごしていた。

 

もしかしてそうでもないのかも?と考えを改めたのはここ数年の話だ。

ネットで様々な記事やツイートを読んでいると、絶縁して数十年になる、子どもの頃からわだかまりがあって今でも残ったままだ…そういう言葉が少なからずあって、それに続く賛同の声もまた、私個人としてはけっこうな衝撃であった。

 

書いていて一つ思い出したことで言うと、出掛ける際に家族に、どこ行くの?誰と?と聞かれることを極端に嫌う友人がいた。

その場にいた友人が次々わかる!と彼女を支持する中、私は、別にやましいことでもないし、そのくらいいいんじゃないの?とは、なんとなく言えなかった。

家族に踏み込まないでほしいパーソナルな部分は人それぞれ違うのだな…と思った。

 

私は、どの友人と遊んでいるよりも家族と過ごす方が圧倒的に楽だ。

昔からそうだったわけではなく、就職し社会人になった辺りから特に感じる。

その日起こったことを逐一報告する…なんてことは特にないが、日常を過ごして気になったことを誰かに話すとすれば、それは友人でも恋人でもなく、自然と家族になる。

友人と出掛けるのが前日・当日に億劫になることはままあっても、家族との時間が嫌になることは基本的にない。

 

最近、これで良いのかと考えることが増えた。

圧倒的に親離れできていないように感じる。

周辺には、「一人になりたい」「家族から独立したい」といって一人暮らしをする友人もちらほらいる。

私は一人で暮らす意味が現状見いだせない。

金銭的なデメリットももちろんあるが、家に帰って家族がいない状況を、自身がどこまで耐えられるか、今のところ想像ができない。

 

私の父親は現在単身赴任で別の県に住んでいて、ひと月に1回、我が家に帰ってくる。

単身赴任直前まではおそらく両親の仲はそこそこ険悪で、言葉にはせずとも私も弟もそれを感じ取っていたが、物理的に距離ができてからは互いに歩み寄り適切な距離が築けているようだ。

今では2日に1日程度、決まった時間に父と電話をしている母の声が聞こえる。

 

特に物理的な距離は良い方向にも作用するのだと。

それを知った私は、やはりこの状況に甘んじず、独立するべきなんだろうか。

近いうちに、答えを出さなければならないかもしれない。